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ところかわれば・・
 お刺身、と言ったら何を思い浮かべますか!?
 
 私は断然マグロ。トロが食べたい!などと贅沢は言わないけど、赤身のマグロをつんとワサビをきかせて食べるのは大好きだ。
 ハマチやブリも好き。ブリは特に父方の出身地(岐阜 高山)の風習で、子どもの頃からお正月には欠かせない食材だった。山間地ではブリは貴重品で、だから年越しのご馳走として食べられてきたのだと言う。「今年も一年無事に過ごせました、の“無事”と“ブリ”をかけて・・」云々という父の話が始まると、あぁ今年も一年終わったのだなぁと子供心に感じたものだ。
 実家では照り焼きにして食べていたけど、今わが家ではお刺身でいただく。少し贅沢になったもののご馳走には変わりない。
 
 ご馳走と言えば鯛という人もいるだろう。“めで鯛”食材、ハレの日に食べるご馳走という地位は日本全国どこへ行っても共通だろうとずっと思っていた。
 
 ・・違うのだ。ところかわれば、だったのだ。


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 岡山県備前市の日生(ひなせ)というところへ行ってきた。瀬戸内海に面した小さな港町。港からは小豆島へ渡る船が出ていたりするものの、鄙びた雰囲気のあるのどかなまちだ。
 ここは古くからの「鰆(さわら)」の産地の一つ。魚へんに春と書くこの魚は、5月から6月にかけて産卵のために播磨灘にやってくる。その漁の様子を取材させていただくのが目的だったのだが、私の興味はもうひとつあった。鰆の食べ方だ。
 
 わが家でも鰆はよく食べる。切り身で売られているのを買ってきて味噌漬けにして焼くと、柔らかい白身に味噌が香ばしく沁みてとても美味しい。一般的には甘い西京味噌に漬け込んだ「西京漬け」が有名なのではないだろうか。
 
 ところが岡山では鰆を刺身で食べるという。
 調べてみると、岡山県は鰆の消費量日本一なのだそうだ。産地なのだから新鮮な魚が手に入るというのもあるが、なんと岡山の市場には日本各地でとれる鰆が集まってくるのだという。
 それほどまでに鰆を食べる岡山県民。いったい岡山の人にとって、鰆ってどんな魚なんだろう?
 

 港に着きさっそく漁師さんたちにお話を伺うと
「5月に入ったら鰆、鰆、鰆」
「鰆とれたからいっぱいやろかってな」
「青年団の集まりや同窓会でも鰆料理」
「人が集まりゃ鰆切らんかってなるなぁ」
 と次々と飛び出す。
 鰆のとれる5月にはちょうど節句がある。子どもの日のご馳走は日生では「さわら寿し」。仲間が集まれば、もとは漁師料理だったという「炒り焼き」を囲む。ハレの日やめでたい席には必ず鰆が食卓にある。日生の人々にとって鰆とはそういう魚らしい。
 

 港での取材を終えた後、地元のスーパーにも立ち寄ってみた。目ざすは鮮魚売場。見慣れた切り身も確かにあったが、刺身売場のそれも特等席に「鰆の刺身」が鎮座している。お惣菜コーナーには「さわら寿し」が山積みになっている。
 
 ところが日生港からわずか10キロほど離れたところにあるスーパーには、鰆の刺身は影もカタチもない。もう1軒、全国展開する大手スーパーにも行ってみたがこちらにも全くない。不思議に思って地図を見てみたら、どちらのスーパーも住所は兵庫県赤穂市だった。
 岡山県の東の端に位置する日生と、兵庫県西端の赤穂市。わずか10キロの間に県境をまたいでしまったようだ。そして「鰆の刺身」境界線も。
 本当に岡山(南部)だけの食べ方だったんだなぁ。局地的な鰆への愛情にふれることができて、驚くとともになんだか嬉しくなった。
 

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 取材でいただいた「鰆のたたき」はほんとうに美味しかった。かつおのたたきよりもあっさりしていて皮が香ばしくて。名古屋でも食べられたらいいのに、と思ってはたと気づく。
 そうだ。これは日生に来て食べるからこそ旨いのだ。瀬戸内のおだやかな初夏の日差しの下、潮風に吹かれながら港町を歩き、日生の人々の温かい人情にふれながらいただく料理だからこそ。旅の楽しみはまさにそこにある。

 どうぞ岡山に行ったら美味しい鰆の刺身を探してみてください。
 

 
 この日取材させていただいた鰆漁の様子は、5月28日(金)のTBS系列「えなりかずき!そらナビ」で放送される予定です。なんとロケでは今年いちばんの豊漁だったとか。どうぞお楽しみに!
 最後になりましたが、日生漁協の天倉さんや漁師の松原さんはじめお世話になった日生の皆様、ほんとうにありがとうございました。名古屋に来たらぜひ「味噌煮込みうどん」食べて行ってくださいね。

by aya_harumi | 2010-05-25 12:44 | 日記
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