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 番組のゲスト打合せと取材で東京へ日帰り出張。
 東京へ行くのは久しぶりだし、お会いする方はとても魅力的な同世代のタレントさんだし、ふだんはディレクターだけで行く打合せに私を同行させてくれたプロデューサーの好意はとても嬉しいし。
 
 ‥‥なのだが、苦手なのだ。新幹線が。
 久しぶりに乗る新幹線のぞみは、東京ー名古屋間がさらに短縮されていて1時間半ほど。何かをするには中途半端で、かと言って眠れるわけでもない。隣でうちのディレクターはしっかり寝てたけど。
 
 日曜日の今日は家族連れやプライベートの旅行客が多く、ふだんのビジネスマンだらけの車内とは趣が違う。まぁ私たちも端からは仕事に見えないのだが。
 とりあえず、お弁当でも食べてせめてもの旅気分を味わいますか。
 
 資料を読み直したり、ノートに取材用のメモをつくったり。それでもまだ静岡あたり。
 この辺りからトンネルも多くなり、しだいに気分が悪くなってくる。昔からそうなのだが、気圧の変化に弱いらしく、まず第一段階が新幹線のドアがプシュ〜ッと閉まる瞬間。車内の気圧が高めになっているからだろうか、耳の奥に一つ耳栓を入れられる気分。
 そしてトンネルに入るたびに耳栓の厚さが厚くなるような。ごくりと唾を飲んでも容易には取れない。新幹線特有の振動もどうも苦手だ。
 
 ふつうの電車や地下鉄には酔わないのだから、おそらくあのスピードに体がついていけないのだと思う。東海道新幹線は最高速度が時速270kmらしい。フランスのTGVは350km/hとか、中国の上海トランスラピットは430km/hとか。
 いらない。少なくとも私には。
 車の運転で高速道路を120km/hで走るのは平気なので、たぶん私のカラダが容認できる移動のスピードがそのあたりが限界なのだと思う。
 
 いや、頻繁に長距離を移動し、一分一秒が惜しいビジネスマンには速いのはありがたいに違いない。だからこそJR各社も技術を競って速さを売り物にしてきたのだ。そういうニーズがあるのはわかる。
 でもたまに乗る新幹線だからこそ、できれば東京ー名古屋間を3時間くらいかけてのんびり行ってみたいと思う。3時間あれば車内でいろいろ楽しめそうだし。ゆっくり眠ることもできるかもしれない。
 
 帰りの新幹線で耳鳴りに耐えながら私がそう言うと、うちのディレクターは
「じゃあ次からこだまで行けば?」
とのたまった。そうか。その手があったか。
 Uプロデューサー、次から私の分のチケットはこだまで取ってください。
 
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# by aya_harumi | 2008-04-07 02:06 | 日記
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 あちらこちらで桜が満開の季節を迎えている。心なしかいつもの年より早い開花。入学式までもつといいなぁ。小学校の横を通りながら想う。
 
 短い花の命を惜しむように、誰もがこの時期桜を愛でる。それに応えるかのように華やかに咲き誇り、ほんの数日でいっせいに花びらを散らす。それがまた儚くて風情があると思ってきた。今までは。
 
 でも今年は違う。
 一本の桜との出会いから、今年はすこし違った目で桜を見ている私がいる。
 
 3月のはじめ、私たちは全国に名を馳せる桜の名木の前にいた。
 岐阜県根尾谷の淡墨(うすずみ)桜。樹齢1500年。あの宇野千代さんが愛したとして有名な桜だ。
 この桜の老木を見守る樹木医さんの取材だった。
 取材場所として指定されたのは、桜の前。名古屋から2時間半かかって辿り着いた根尾谷は、まだ道端に雪が残っていた。シーズンになれば観光バスで埋まる駐車場も今は閑散としている。
 
 桜は圧倒的に大きかった。手元の資料によれば、樹高16.3m・幹周り9.91m。どっしりとした幹から出た枝が左右に大きく広がり、遠目には美しい円錐形を形づくっている。淡墨桜はその樹形の美しさからも高く評価されている。この枝いっぱいに淡墨色の花が咲いた姿はそれはそれは圧巻だろう。
 
 でも私の目には、桜は痛々しかった。
 開口一番、樹木医さんが教えてくれたのは、あの太い桜の幹の中はがらんどうだということ。外側の樹皮と、その下のわずかな形成層だけで生きているのだと。無数の柱で支えているのは、もう自らの力で立ち続けることができないからだと。
 大きく張り出した枝にも樹脂を流し込んで補強した痕が見える。冬場は支柱の先から荒縄で枝を吊る「雪吊り」や雪落しが欠かせない。積もった雪の重みでも倒れてしまうのだという。
 
 淡墨桜は過去に何度も枯死しかけている。昭和20年代には、いよいよ危なくなった淡墨桜に桜の若木の根を200数十本、一本一本手で根接ぎするという気の遠くなるような大手術を受け息を吹き返した。台風や大雪のたびにもう駄目か、もう限界かと言われながら奇跡的に生き続けてきた桜なのだ。
 
 もはや人の手なしには生きられない桜。人により生かされている桜。
 不謹慎かもしれないが、たくさんの延命装置をつけられ意識もなくただ横たわる重病患者のように私には見えた。
 そうまでして生き続けることを、桜は望んでいるのだろうかと。
 
 その意識を変えた出来事は、撮影中に起こった。
 樹木医さんのふだんの仕事の様子をカメラに収めようとしていた時のこと。
 と言っても、雪吊りや施肥など特別な作業以外は桜の様子をつぶさに観察することが樹木医の仕事だ。ただ桜を見るだけではつまらないので、じゃぁ地面でもちょっと掘ってみますか、と言ってくださった。
 
 幹から2mほども離れたところを掘った時。
「いい根が来てる! ほら」
 樹木医さんが見せてくれたのは、新しく伸びた10数cmほどの淡墨桜の根。今年中にあと30cmは伸びるだろうと嬉しそうに教えてくれた。
 幹から遠く離れたここから16mもある樹の枝の先端へ向けて、生きるための水や栄養分を吸い上げる。水分がすみずみまで行き渡れば、花や葉がつくのはもちろん、枝もしなやかになり折れにくくなる。
 
 生きたい。私には桜がそう言っているように聞こえた。
 
 ぱっと咲いてぱっと散る。散り際の潔さが美学のように讃える文化がわが国にはある。淡墨桜が幼木だった時代から、そんな桜を我が身にうつした歌が詠まれてきた。
 老いてなお醜さを晒しながら生きるくらいなら、美しさをとどめているうちにこの世を去りたい。そう願う人も少なくない。
 
 でもこの桜は違うのだ。ボロボロになりながら、人の手を借りながらも、桜自身精いっぱい生きようとしている。その姿はけっして醜くなどない。老いたものだけが見せることのできる、ひたむきで力強い輝きを感じた。
 
 そんな時、映画「タイタニック」をテレビで久しぶりに観た。公開当時も涙しながら観た記憶があるが、今回目がいったのは、若くて初々しいディカプリオでも可憐なローズ役のケイト・ウィンスレットでもなく、一人の老婆だった。
 ローズの現在の姿、脚本では101歳という設定のこの老婆を演じるのは、グロリア・スチュアート。調べてみたら1930年代にグラマーなブロンド美女として人気を博したハリウッド女優さんだそうだ。75年に30年ぶりにカムバック、以来今なお現役で、アカデミー賞演技部門の最年長ノミネート記録も持っている。
 
 オープニングとエンディング、物語の語り部として登場する彼女はしわしわのお婆さんで足取りもおぼつかない。若い頃はあんなに綺麗なローズも、年取るとこうなっちゃうのねぇと女性としては少々哀しく思えた人もいたのでは。
 でも私には美しかった。老人だから表情も微かだが、微笑む姿はチャーミングですらあった。最後の宝石を海に投げ込むシーンでは、ハラハラするほど可愛らしかった。
 
 私がこの映画で最も好きなシーンは、ラスト近く、穏やかな表情を浮かべベッドに入る彼女の枕元に並べられたセピア色の写真を一枚一枚カメラが映し出していくシーンだ。飛行機に乗って得意げなポーズをきめたり乗馬に挑戦したり。回想シーンとも言えるこの場面は、ジャックを亡くし、自由の国アメリカに渡った彼女が、その後の人生を精いっぱい輝かせながら生きたことを伝えてくる。それはジャックとの約束だから。
 
 この映画で、監督であり脚本も書いたジェームズ・キャメロンがもっとも伝えたかった一言があるとすれば、それは極寒の海に愛するジャックを沈めたローズが言う台詞、
「あきらめないわ」
なのだと私は思っている。
 生きることを諦めない。そうして生き続けた人は、年老いてもなお、そこに存在するだけで人々を魅了する力があるのだと。
 
 そう思えば、最近小皺が増えただの肌のハリ艶がなくなってきただの、たかだか40年ちょっと生きたくらいで言ってる私はまだまだ若輩者ですね。
 したたかに、しぶとく生きてやる。死んで花実は咲くものか。桜を見上げながら誓う私。不気味とか言わないように。


  淡墨桜を守る樹木医・浅野明浩さんのお話は、4月6日(日)のCBCテレビ「ちきゅう屋駄菓子店」
 放送されます。後半の「ちきゅう屋劇場」というVTRのコーナーです。
  最後になりましたが、浅野先生、貴重なお話をありがとうございました。

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 取材して台本書いて撮影して編集して。ポルックスはこのところ全員がフル稼働。
 私も原稿書きの合間に次の取材先へ、という日々が続いている。もうね、頭の中が飽和状態よ。えっと、今日はどの番組だったっけと確認しながら夕方、名古屋市北区の取材先へ。
 
 取材は私の仕事の要(かなめ)。短い時間でどれだけ相手の懐に飛び込んで話を聞き出せるか、ホンの出来は取材にかかっていると言ってもいい。
 だからどんなに忙しい時でも、必ず約束の時間よりかなり前に現場に着くように出かける。早めに着いて、まずは現場を確認して、それからその近所をぐるりと一回り。ロケハンも兼ねているので、撮影の時スタッフが食事できそうなところやロケ車を停める場所を下見しておく必要もある。
 それでもまだ余裕があると、コンビニに立ち寄って時間調整。ここで資料を見直したり、気持ちを高めてからいざ出陣!というのがいつもの私たちのパターンだ。
 
 それが今日は現場を確認した後、近所をひとまわりしていたら桜並木が目に飛び込んできた。あぁそうか、黒川だ。
 正確には「御用水跡街園」というのだそうな。堀川(黒川とも言う)に庄内川の水を引き入れるために掘られた用水路で、昭和48年に埋め立てられ、今は緑の散歩道として整備されている。そこに植えられた桜並木が見頃を迎えていたのだ。
 
 このところの温かさでほぼ満開の桜。明日からの週末は桜まつりでもあるのか、やぐらが組まれたり屋台の準備が始まっていた。
 川沿いに車を停めて、取材時間までしばしの花見をすることに。やったね、なんか少し得した気分。写真も撮れたし。満足して車に戻ると、うちのADムラセがのたまった。
「これで今年の花見終了!」
 ええっ、たった5分で? うそーと私が叫ぶと
「だって花見たじゃないですか。花見は花を見りゃいいんです」

 確かに明日も明後日もポルックスは休みなし。ゆっくりお花見する暇もないうちに、今年もまた桜の季節が終わるんだろうな。
 あぁぁ、だけどね。花見は花だけじゃないんだよ。せめてお団子くらい食わせてよ。
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# by aya_harumi | 2008-03-28 23:45 | 日記
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 明日のスタジオ収録用の小道具づくり。
 急に決まったので美術さんへの発注が間に合わなかったらしい。うちのADムラセくんが困っていたので協力することに。
 元はと言えばその台本書いたの、私だし。

 ムスメの習字道具借りて、小一時間ほどお習字しました。
「もう少し字大きい方がいいな」
 とかいう、ディレクターのうるさい注文に応えながら。
「書けたよー」
 と局へ準備に行ってるムラセに写メールしたら、
「採用させていただきます」
 とエラそうなありがたいメールが返ってきた。

 しかし小学生のときお習字習っておいてよかったよ。こんなところで役に立つなんて。

 この小道具は、4月20日(日)のCBCテレビ「ちきゅう屋駄菓子店」で使われるそうです。(カットされなければ)たぶん後半の方。
 登場したら、ハルミがしこしこ書いたんだぁ!とTVの前で笑ってやってくださいね。
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# by aya_harumi | 2008-03-22 17:33 | 日記
写真素材 PIXTA
(c) ともくん写真素材 PIXTA


「かき氷、始めました」
 みたいな出だしですが。

 実を言えば、お仕事ブログを書くのは初めてではありません。
 3年ほど前も「春のおと」というタイトルでブログ書いてました。ちょうどブログというものが流行りはじめた頃で、撮影や取材の裏話をぽつぽつと綴っておりました。
 削除した記憶もないのでまだどこかに存在してるはず、と今回探してみたら、ありました。ここに。4ヶ月で挫折してましたけど。

 放送作家というのは、唯一、自分の書いたものが活字にならない職業だとどこかで聞いたことがあります。
 ドラマの脚本は書籍化されることもありますが、バラエティや情報系の番組の台本はどんなに苦労して書き上げてもまず活字になることはありません。
 それどころか、収録が終わればたいていはゴミ箱行き。オンエアもよほどのことがなければ1回きり。あぁ儚き運命。

 だからときどき無性に自分の書いた文章をそのまま読んでもらいたくなるのかもしれません。いや、それともただの現実逃避か。
 ともかく、始めちゃいます。
 関係者のみなさん、「ブログ書いてる暇あったら原稿書け」というツッコミは無しでお願いします。ね。

 ところで、タイトルの「春夏冬中」読めますか? うちの事務所で数名に聞いてみたところ、今のところ全滅。こら。
 春、夏、冬で秋がないから「あきない中」=「商い中」。よくお店屋さんの入り口にこの札がかけてありますよね。
 江戸時代、庶民の間に広まった「判じ物」の一種で、要は謎かけです。他には「二升
五合」と書いて「ますます繁盛」(二升=「升(ます)」が2つ、五合=一升(しょう)の半分)とかね。

 ほらね。勉強になったでしょ。作家やってるとこんな雑学ばっかり増えていきます。
 こういうの、タイトル決める会議では真っ先に没になるんだろうな。「読めない」「わかりにくい」「ひねり過ぎ」とか言われて。
 でもいいんです。ブログだから。誰になんと言われようと、このままつけてやる。ついでに「飽きない」で続けられたらいいな、と勝手なこじつけもつけちゃえ。

 前口上はこのぐらいにして。
 「あきない中」ブログ、スタートです! どうぞご贔屓に。
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# by aya_harumi | 2008-03-22 12:00 | ご挨拶