<   2009年 03月 ( 2 )   > この月の画像一覧
b0126865_12438100.jpg


 3月。別れと旅立ちの季節。
 私たちが働くテレビの世界でも、この春いくつかの番組が終了する。今年は不況のせいもあってとりわけ多いような気がする。

 そんな中、ひとつの番組が幕を閉じる。
 中京テレビの「人生の応援歌」
 毎週土曜日、夕方5時55分〜6時という枠で放送してきた小さな番組。2004年4月にスタートし、足かけ5年間続いた番組だ。放送回数はのべ257回に及んだ。私たちポルックスも5年前の立ち上げから参加させていただき、およそ半分の120回以上を担当させていただいたことになる。
 
 先日、すでに最終回までの撮影と編集が終わった時点で、これまで5年間に番組に携わったスタッフ全員による打ち上げが行われた。
 ふつう番組終了というと、私たち現場のスタッフは悲喜こもごもだ。「よくやった」「がんばった」という達成感がある一方で、「やっと終わる」「解放される」という気持ちが全然ないと言ったら嘘になる。これまでいくつかの番組終了に立ち合ってきたが、どちらかというと達成感よりは「もっとこんなこともやりたかった」「こうすれば終了にならずに済んだのかも」と思うことの方が多かった気がする。
 
 でもこの日の打ち上げは、そのどれとも違う雰囲気だった。
 手探りで始まった初回のドタバタぶりを振り返る者、印象に残る出演者を挙げる者、ロケ中の武勇伝を披露する者。誰もが楽しそうで懐かしそうで、そして切なそうで。誰もが別れを惜しんでいた。そう、まるで卒業式のように。

 宴会の最後、ひとりひとりが番組への想いを順に話していった。どのスタッフの発言もみな番組への愛にあふれていたが、中でもその場に居合わせたみんながはっとしたのがこの言葉だ。
 「この『人生の応援歌』という番組は、5年もの間、一度もリニューアルしなかった大変珍しい番組です」
 そうなのだ。
 番組タイトルやコンセプトはもちろん、テロップの字体一つに至るまで初回からまるで変わっていない。唯一ナレーターだけは諸事情で一回変わったが、それでも内容そのものは5年間一度もぶれなかった。
 こんなことはこの業界では本当に珍しい。たいていは途中で「てこ入れ」「リニューアル」の名のもとにさまざまな変更が加えられる。理由は視聴率不振のこともあれば、長く続けるうちにマンネリ化していくこともある。飽きっぽいテレビという世界で、走りながら手直ししていく、そんなことは日常茶飯事なのだ。
 
 「人生の応援歌」はそのどれとも無縁だった。これほどつくり続けてきても飽きるということがなかった。3年目ぐらいからは取材先へ行くと「見ているよ」「いい番組だね」と言ってもらえることも多くなった。テレビの取材はもう懲り懲り、とおっしゃっていた方が番組を見てくれて「この番組なら」と出演を快諾してくれたこともある。
 
 なんて幸せな番組。そしてそんな番組に関われたことの幸せ。
 あの場にいたスタッフみんながそんな想いだったに違いない。もちろん、私も。
 

 そしてもうひとつ、この番組をやっていてよかったのは、現場でたくさんの元気を分けていただけたことだ。

 これも多分珍しいことなのだろうが、撮影に行く現場のスタッフはやけに年齢層が高かった。カメラマンも照明さんもディレクターも、四捨五入すると50代の オッサン ベテランばかりということも少なくなかった。みんなの正確な年齢を聞いたわけではないが、現場での平均年齢は軽く40代後半に届いていたかも。
 そして、出演者は番組ホームページで見ていただければわかるとおり、この道一筋に歩んでいらしたまさに人生の大ベテランだ。取材先でお話を聞くたびに、自分たちはまだまだ若輩者だと痛感した。まだまだ頑張れる、頑張らなくちゃ、とも。

 「人生の応援歌」という番組タイトルは、とかく元気をなくしがちな40代・50代のお父さんたちへの応援歌という意味だったのだが、何のことはない、熟年チームの私たちスタッフが現場でいちばん元気や勇気をいただいていたわけだ。
 こんな幸せな番組はほかにない、と思う。
 
 
 この週末が最終回。
 でもね。番組では最終回とはどこにも出てきません。いつもと同じ内容でいつもと同じように放送してひっそりと幕を閉じようということになりました。
 なぜなら、みんなこれが本当の「最終回」だとは思っていないから。
 いつかまた「人生の応援歌」を制作しよう。それまでのこれはお休み。そう、「番組終了」ではなくて「休止」なのだと。
 そう約束し合って、打ち上げはお開きになりました。

 
 「人生チーム」のみなさん、ありがとう。さよならじゃなくて、またね。



  中京テレビ「人生の応援歌」、3月28日(土)の第257回(一応の最終回)はお菓子職人の小田春雄さんです。たった一人でドライカステラをつくり続けているそのワケを、ぜひ番組でご覧下さい。
  最後になりましたが、これまで番組を支えてくださった出演者のみなさまに心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

[PR]
b0126865_039162.jpg


 大学病院へ行って医療ドキュメントを撮影してきた。

 と言っても、人間の医療ではない。岐阜大学に、動物の高度先進医療を行う動物病院がある。システムは人間と同じ。地域のかかりつけ医からの紹介を受けた患者(の動物)を診療する二次医療機関だ。手術室はもちろん、超音波からCT、内視鏡など使う設備も人間並み(というか、機器そのものは人間用)。それぞれの専門分野をもつ獣医師たちが、難病の動物たちと闘っている。
 
 大学病院というと、イメージは「白い巨塔」だ。偉い教授のセンセイがいて、医局があって、権謀術数が渦巻いて、何だか一般人には敷居の高いところ。
 と思って少々ビクビクしていたのだが、訪ねて行ってみると出迎えてくださったのはどの先生も、気さくで温厚でそれでいて医療を語れば熱い、とても魅力的な先生ばかりだった。難しい医療用語から最新の医療事情まで、素人の私にもわかりやすく話してくださる姿勢には、ただただ感激だった。勝手なイメージを抱いていてごめんなさい、と心の中で謝る私。
 
 その熱意を伝えるべく、撮影では大学動物病院の一日に密着することに。そう、これはまさに医療ドキュメントだ。

 
 ロケ当日。診療時間のはじまる1時間前に現場に入った私たちに、その日午前中の外来診療を密着させていただくことになっていた先生が告げた、衝撃の一言。

 「例の膠原病のダックスフント、主治医から連絡あって昨日死んじゃったんだって」

 紹介状をもって予約制で受診する大学病院なので、あらかじめ当日どんな患者がやってくるかおおよそわかっている。この日、内科の外来診療でメインに撮影させていただく予定で打合せを進め、飼い主さんの出演承諾もいただいていたワンちゃんが、前日急に亡くなってしまったというのだ。
 朝いちばんからいきなりのアクシデント。いったいどうなるのだろう。予測不能な現場に、スタッフも青ざめる。
 
 とにかくカメラを回すしかない。淡々とありのままを撮ろう。
 機材を搬入して診察開始を待ちながら、心の中で医療ドキュメントを制作する辛さをあらためて噛み締めていた。

 番組としては、盛り上げるためにも難しい病気をもつ患者さんが来てほしい。その病気に医師たちがどう立ち向かい、飼い主さんとともにどんな治療を選択し、その結果どうなったか。立ちふさがる壁が高ければ高いほど、揺れ動く心の幅も大きくなる。できればその一瞬の表情をとらえて、テレビの前にいる人たちに伝えたい。
 
 でもその一方で、心はひどく痛むのだ。重い病気を持つ動物たちなんて、来ない方がいいに決まっている。自分も犬を飼う一人として、飼い主さんの心情は手に取るようにわかる。動物と言えど、大事な家族の一員なのだ。病気を喜ぶ人間がどこにいる。
 
 来てほしくないような、でも来てくれないと困るような。
 そこでふと気づく。今回は動物病院だからまだよかったのだと。これがもし人間の病院だったら。よく『救命救急病院 密着24時!』なんて番組をやっているけれど、これこそ患者さんは来ない方が本来いいわけで。でもだからといって一人も来なかったら、番組は成立しないわけで。
 
 幸いにも(という言い方が決していいとは思わないが)この日、初診のワンちゃんがやってきてくれて、診察のようすを無事に撮影させていただくことができた。しかも検査の結果、深刻な病気ではあるが原因がはっきりとわかり、治療の目処も立つという。先生の「手術すれば治ります」の言葉に、ほっとする飼い主さん。カメラの後ろで私たちスタッフも、思わず胸を撫で下ろしていた。あぁよかった。
 
 
 午後からは手術シーンを撮影することになっていた。お願いしていたのは腫瘍科の先生。こちらは内科以上に厳しい病状の子がやってくる。腫瘍にもいろいろあるが、悪性腫瘍はいわゆる癌だ。事前の取材では助からないケースの方が多いとさえ聞いていた。ここでも悩む。悲惨なシーンは撮りたくないが、それもまた現実なのだ。目の前に突きつけられた時、私たちは果たしてカメラを回し続けることができるのだろうか。

 
 もうね、ここから先はどうかオンエアを見てください。
 朝から夜まで私たち撮影隊は一日病院にいましたが、こんな思いを先生や病院のスタッフは毎日しているわけです。そしてどの先生も、いったいいつご飯を食べているのだろうというほど働いていらっしゃいます。ほんとうに頭の下がる思いでした。

 
 台本をつくっていて獣医学のことを調べていた時に、こんな言葉を見つけました。
 
 『獣医学というのは動物を診ることではない。医師、歯科医師、薬剤師が「人間を助ける職業」である事と同様に、獣医師は「人間を助けるように動物を処置する職業」であり、「直接的に動物を助ける職業」ではない』   
             出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

 
 獣医というと動物を助けるカッコいい職業というイメージがありますが、実際には「動物を助けることを通じて、人間を助ける・幸せにする・利益をもたらす」のが仕事。そのことを、取材させていただいたどの先生も、言葉は違えど仰っていたのが印象的でした。
 そのために並々ならぬ覚悟で医療に立ち向かっていらっしゃいます。その一端でも、今回の番組で伝えることができたらと思います。
 
 最後の獣医師の一言。私はグッときました。

 
 
 岐阜大学動物病院の密着ドキュメントは、3月15日(日)の東海テレビ「スタイルプラス」で放送される予定です。
 最後になりましたが、病院長の鬼頭先生、内科の前田先生、腫瘍科の森先生、お忙しい中をほんとうにありがとうございました。インタビューや撮影に応じてくださった飼い主の皆様にも、この場を借りて心よりお礼申し上げます。

[PR]