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 これは何かの試練なのか?
 そう思うほど、このところ毎日のように締め切りに追われている。書いても書いても次々と書かねばならない原稿がやってくる。
 ありがたいことなのだろうが、生活のほとんどすべてが「書く」ことに埋め尽くされるとさすがに辛くなってくる。生きるために必要な最低限のこと、食べることと眠ること以外はずっとPCに向かっているか、書くために必要な取材や打合せをしているか。トイレに入っていても歯を磨いていても、頭の中はナレーションのフレーズを考えていたり企画書のタイトルをあれこれ思い浮かべていたり。暑さもあいまって知恵熱が出そうだ(事実、出た)。
 
 もうダメだ。もうやめたい。何度そう思ったことか。
 自分はいったい何のために仕事をしているのだろう、と根源的な疑問すら浮かんでくる。
 お金のため? お金を稼ぐだけだったらもっと楽な仕事があるんじゃないか(でもどんな仕事だって大変なことはあるはず)
 名誉のため? 何だ名誉って。別に今さら偉くなりたいとかナントカ賞を受賞したいとかないぞ(くれるものは貰うけど)
 視聴者のため? うーん、なんだかイメージしにくいな(いや、いつもお客さんのことは考えているけれどね)
 あれこれ浮かんではくるけど、そんなことを考えてる時間がもったいないので頭の隅に追いやりながら、原稿の続きをまた考える。辛い。あぁ私、なんでこんな辛いことしてるのかな。と再び堂々めぐり。
 
 「書く」ということ自体は昔から嫌いではない。いろんな人に出会って得られたさまざまなこと、驚きや感動や共感したことを「書く」ことを通じて人に伝えるのも、たぶん私の性に合っていると思う。日本語という言葉の豊かさもとても好きなので、それを扱う職業にも誇りを持っている。
 
 でも、辛いものは辛いのだ。
 どんなに取材や打合せをしてきても、最終的に文字にする作業は1人きり。ひとりで思考の奥深くに潜り込んで、そこから言葉を見つけ出して一文字一文字紡いでいくしかない。誰も手伝ってはくれない作業。ぴったりの言葉がすぐに浮かぶことなど稀で、たいていはうんうん唸りながら七転八倒することになる。締め切りは刻々と迫る。逃げたい。でも逃げられない。
 
 あぁ、私ってなんでこんな辛いことしてるんだろう。
 
 そんな時に見つけた言葉がある。いや、以前から目にはしていたのだけど、あらためて気づいたというべきか。
 
 『ONE FOR ALL』───1人は、みんなのために。
 
 この言葉には実は続きがあって、フルバージョンでは『ONE FOR ALL , ALL FOR ONE』。直訳すると「1人はみんなのために、みんなは1人のために」だ。
 
 ラグビーをやっていた人なら聞いたことがあると思う。チームワークの大切さ、一人一人がチーム全体の中で果たすべき役割があるといった意味で使われる言葉だ。
 転じてサッカーや野球などチームでプレーする競技でもよく使う。私が目にしたのもバスケのチームメイトが着ていたTシャツでだ。
 1人の優れたシューターがいるだけでは試合には勝てない。絶妙なタイミングでパスを出す者、ディフェンスを引きつける者、カバーにまわったりブロックをする者、全員が1本のシュートのために動く。それぞれの持ち味を生かしながら。
 
 あ、これかもしれないな。私が辛くても頑張れる理由。
 
 私たち映像制作の仕事はまさにチームワークだ。現場ではカメラマン、音声さん、照明さんといった職人肌の技術さんたち。編集した映像に素敵な音楽や効果音をつけてくれる音効さんや喋りのプロのナレーターさん。そしてそれをまとめあげるディレクター。みんなそれぞれが専門職で、それぞれの分野で力を発揮しあって一つの作品ができあがる。
 
 私の書く企画書や台本は、いつもそのスタートなのだ。
 制作にかかわるすべての人が、私の書いたものを頼りに各々の仕事を進める。よく台本は建築で言う設計図に例えられるけれど、設計図がちゃんとしていなければ職人さんたちは何をどう作ったらいいかわからない。台本が上がらなければ、誰も仕事にとりかかれない。
 
 プレッシャーは正直、ある。
 脚本家で、NHKの連ドラ「ふたりっ子」を書いた大石静さんは「私の後ろには100人のスタッフがいる」と思いながらあの長いシナリオを書ききったそうだ。
 さすがに100人もはいないけれど、私の書くものは間違いなくスタッフみんなが必要としているものだ。
 このホンを待っている、みんなのために。辛いけど頑張ろう。
 
 頑張り過ぎてフラフラになりながら仕事場から自宅に戻り、何日かぶりにムスメたちといっしょに夕食をとった。なんのきっかけだったか話題が「将来の職業」の話になった時。
 イラストや漫画を描くのが大好きな次女が、きっぱりと宣言した。
 「わたし、漫画家にはならない」
 え、どうして? ちょっと前まではあんなになりたいって言ってたじゃない。夢を諦めるにはちと早すぎないかい?
 「だって締め切りがあるもん。テーマだってあるし。好きなものを好きな時に好きなだけ描いてるのは楽しいけど、仕事にしたらそうじゃなくなるでしょ」
 そ、それは親を見て言ってるのか。小6にしてこの達観。誉めてやるべきなのか嘆くべきなのか、親としては激しく悩む。あぁやっぱり知恵熱が出そう。
 
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by aya_harumi | 2008-07-20 12:43 | 日記