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 しばらくブログの更新が止まってしまいました。いえ、別に商いを休んでいたわけではなく、ブログを書く暇もないほど商いに精を出していたわけで。はい、もう書いて書いて書きまくっていたような気がする。ここしばらく。
 
 そんな日々を過ごしているうちに、気づいたら梅雨入りしていた。
 私たちの仕事にとって雨は大敵。雨の中のロケはそれはそれは大変なのだ。内容によっては、雨だと延期しなければならないことも(それもまた大変)。でもこの時期、予備日だって雨が降らないとは限らない。
 だから結局雨でも決行。そしてきまってスタッフの誰か1人に集中砲火を浴びせる。またいるんだ、運の悪いヤツが。なぜかそいつがいるロケに限って雨が降ることが多いって人。「そう言えばこの前も降った」とみんなで寄ってたかって「雨男」に仕立て上げる。この業界、一度ついた雨男の称号はなかなか消えてくれない。
 それぐらい雨は忌み嫌われるということ。どんなロケでもスカッと気持ちよく晴れてほしいものなのだ。(ちなみに私は「雪女」。これも実は嫌われる)
 
 で、こんなやっかいな時期に私たちはどこへ取材やロケに行っていたかと言うと。

 ひとつは愛知県の東北端、町の面積の90%が森林という北設楽郡東栄町。杉林の中で栽培されている林間ワサビの取材だ。林の中で木漏れ日を浴びて育つワサビを、なんとしてでもカメラにおさめたい。
 そしてもうひとつは岡崎市の中心部から車で30分のところにある、全校生徒68名の小学校。学校林である裏山を、昔の里山の姿に戻そうとみんなで活動しているという。こちらも雨が降ったら活動そのものが中止になってしまう。
 
 連日天気予報とにらめっこしながら迎えたロケ当日。どちらも奇跡的に晴れ間がのぞき、無事に撮影することができた。
 こういう時はスタッフみんなが自慢げに言う。「俺、晴れ男だから」「いや、俺だよ、俺」子どもじゃないんだから。
 それぐらい梅雨の晴れ間は貴重なのだ。私たちにとっては。
 
 
 で、あちこちの「山」を訪ねながら思ったこと。
 ほんとうに今、山仕事の担い手が減っているんだなぁと。林業の衰退は言われて久しいが、このままだと日本の山はどうなってしまうんだろうというぐらい、危機的な状況だ。
 
 日本は国土の3分の2が森林で、北欧に並ぶ「森林大国」だ。そしてその森林の多くが自然林ではなく、人が手を入れながら育ててきた「人工林」。木材としての杉やヒノキを育て、間伐材も余すところなく利用してきた。人里近くの山では炭を焼いたり薪にするための雑木や小枝、家畜の餌にするための草を集めに行った。昔ばなしの「おじいさんは山へ柴刈りに」という「柴」は、こうした小枝や草のことだ。
 山の恵みを暮らしの中に存分に取り入れてきた国なのだ。
 ほんの数十年前までは。
 
 時代とともに、木材は安価な輸入材にその需要を奪われ、人手がないため間伐が行われることも少なくなった。炭も薪も現代社会では必需品ではなくなり、柴刈りするおじいさんも姿を消した。
 
 「山というものは人が行くことが肥やしになる」
 そう教えてくださったのは、東栄町の林業家の方だ。
 山はとにかく人が入って、巻き付いたつるを取り除いたり余分な木を伐採したり、下草を刈ったり枝打ちをすることが大切なんだと。そうすることで森林が健康な状態に保たれる。人が入らなくなった山は荒れる一方だと。
 
 その山の手入れをする人々が、今急激に減っている。
 それは山の恵みがお金にならないから。なぜお金にならないかと言ったら、それを必要とする人がとても少なくなっているから。
 
 でもね。実は日本の木ってすごいのだよ。それを私は毎日実感している。
 
 ポルックスの事務所も含めたわが家は、日本の木をつかって建てられている。建物の構造材や母屋の床板には徳島の杉が、会議にも使われる母屋の大テーブルは信州のアカマツが、事務所の床板には丈夫な栗の木が。
 
 家を建てようとした時、真っ先に考えたのが「国産の木で建てる」ことだった。
 昔取材させていただいた宮大工の棟梁や、その時に資料として読んだ本の内容が頭から離れなかったからだ。
 
 飛鳥時代からの技を受け継ぐ宮大工さんが口を揃えて言うのは、「日本の建物は日本の木で建てるのがいちばん」ということだ。
 木というのは、伐られて木材として建物の一部になっても生きている。100年かけて育てた木で建てた建物は100年もつ。樹齢千年ならば千年。法隆寺などの歴史的建物が残っているのはそのためだ。
 そしてそれは、日本の風土に合った木だから。四季があり、湿度が高いこの国で育った木は、建物になってもその気候にもっとも適したものになる。
 
 幸いにも、国産の木をつかってとてもいい家づくりをしている大阪の設計士さんと出会うことができ、私たちの家が建った。
 そして住み始めてつくづくと思った。「やっぱり日本の木ってすごい!」
 
 その実力をいちばん実感できるのが、この梅雨の季節だ。
 じめじめとした湿気が家の中にこもりがちだが、わが家は違う。木がほどよく湿気を吸ってくれるので、家の中は比較的爽やかだ。風のある日は窓を開けておけば涼しいくらい。エアコンの除湿モードなしには過ごせなかった以前のマンション暮らしとは大違いだ。

 逆に乾燥する冬場は湿気を吐き出してくれるので、これまた快適。
 よく「一戸建ては寒い」と言われるが、木は昼間の温もりをためていてくれるので、夜になってもほんのりと暖かい。母屋は2階までの吹き抜けがある大きな空間だが、床暖房とふつうサイズの石油ストーブひとつで十分なくらいだ。
 建てて9年たつが、いまだに玄関に入ると木の香りがすると言う(家人は慣れてしまってわからない)
 そしてわが家ではスリッパを使わなくなった。客が来ても出さない。足の裏への肌触りが心地よいから、スリッパを履くなんてもったいないのだ。

 木の家はすごい、とうちに遊びに来た人は実感してくれる。けれど同時に決まって言われる言葉がある。「でも高いんでしょ」
 そりゃ無節の総ヒノキで建てりゃ高いよ。間違いなくね。
 でもわが家のように、節があっても味わいがあっていい、ヒノキほど硬くないけど杉でもいいよというのならばびっくりするような額にはならない。同じ規模の建売住宅と比べても、そんなに大きくは変わらないんじゃないかな。(それはもちろん、予算のない私たちのために、設計士さんがものすごく知恵を絞ってくださったおかげもあるのだけれど)
 
 自分たちが気持ちよく暮らすために建てた家。
 けれどこの家が、わずかながらでも日本の山を守ることに役立っているのなら嬉しい。こういう家がもっともっと増えてくれれば、木材の需要も増え、林業に携わる人々も山を捨てずに済むのになと思う。
 
 木の家ってすごいんだよ、とみんなに触れ回る私たち。でもうちの子どもたちは小さかった頃、よく言ったものだ。
 「木のおうちもいいけど、レンガのおうちの方がもっとよかった」
 ん? レンガのおうち? 何それ。
 
 理由は、保育園にお迎えに行った時にわかった。
 『3びきのこぶた』の絵本。わらのおうちと木のおうちはオオカミに壊されてしまうけど、レンガのおうちはびくともしませんでした、というお話。
 レンガのおうちは日本の風土には合いませんって。オオカミもいないし。ね。
 
 
 
 
  東栄町の「林間ワサビ」のお話は7月13日(日)、里山再生活動をしている岡崎市立秦梨小学校のお話は
 8月10日(日)のCBCテレビ「ちきゅう屋駄菓子店」で放送されます。
  いずれも後半の「ちきゅう屋劇場」というVTRのコーナーです。どうぞお楽しみに!

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