向日葵に想う。
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 犬の散歩の途中、公園の花壇でヒマワリが満開だった。あぁ、これぞ夏の景色だなぁ。さすが“向日葵”と言うだけあってみんな一斉に太陽の方を向いて咲き誇っている。
 が、その中で一つだけまったく違う方角を向いているのがあった。

 あぁ、どこの世界にもいるよね。こういう天の邪鬼(あまのじゃく)な奴。

 私自身、どちらかと言えば天の邪鬼な性質だ。
 ブームを見つけるのは大好きだが、あまりにもブームになり過ぎると熱が冷めてしまう(『アナと雪の女王』は、だから観ていない)。「右向け右」と言われると左を向きたくなる。みんなが「そうそう」と頷いていると「ホントに?」と疑ってかかる。あぁ、めんどくさい性格。

 いや、でもこの向日葵が無性に気になったのは、私に似ているからじゃない。この夏、たった一人で奮闘している次女にダブって見えたからだ。


 高校3年生の次女が卒業後の進路を就職に決め、就活のまっただ中にいる。進学校なのでまわりはみんな受験勉強。なんと就職するのは学年でたった一人だという。
 自分の進路は自分のもの。好きな道を進めばいいという主義の私でも、さすがに気になって何度も確かめた。
「ねぇ、ほんとうにいいの?進学しなくて」
「うん。不安じゃないと言えば嘘だけど、就職するって決めたことは全然後悔してないよ」
 いやにさっぱり、きっぱり。一人なのは、孤独ではあるが平気なのだそうだ。思えば、高校進学の時にも自宅から遠いこの高校にどうしても行きたいと言って、地元の中学からたった一人で受験したんだもんね。

 ずいぶん根掘り葉掘り聞いたが、要するに次女の言い分はこうだ。

 大学や専門学校は、一つの分野をとことん勉強して究めるところ。高校の勉強は嫌いではないが、自分にはそこまで深く探求したいと思える分野があるわけではない。まわりがみんな進学するからって、目的もないのにただなんとなく大学に行くのは違うと思う。
 それよりも今いちばんしたいのは仕事をすること。働いて人の役に立って認められて給料をもらって自分も成長する。その方がよほど充実している。
 どうせいつかは就職するのなら、4年間ダラダラ過ごして就活で苦労するより、部活や勉強でうんとがんばったと胸張って言える今の方が有利でしょ。

 ───た、確かに。正論すぎて何も言えやしない。

 学年でたった一人。
 いくら正論とは言え、みんなと同じ方を向かないというのは勇気がいることに違いない。その勇気はどこからくる?
 考えていて思い当たったことがある。そういえばこの子は小さい頃からまわりとはちょっと違う、ユニークな発想をする子だったのだと。


 目をキラキラさせて帰ってきたかと思えば、
「あのねー、今日ね、ずーっとお空を見ながら歩いてきたの。いろぉんな雲があったよ!」
 そ、そう。よくぞ無事に帰ってこれたね。

 保育園で真っ黒に塗りつぶした絵を描いてきた時。うわー、これはヤバいでしょ。なにか心に不満や不安をためているのかも。色彩心理学を思い出しながらおそるおそる尋ねてみると
「これはねー、夜なの。真っ暗でコワイけど夜ってオモシロイね!」
 そうか、夜ね。お花やおうちやお母さんより、キミは夜を描きたかったんだ。

 小学校の作品発表会。「海の生き物」のクラス展示で「たこ」や「クジラ」が並ぶ中、次女の作品に付けられた名札はなぜか「スイートン」‥‥
「だって先生が『名前をつけましょう』って言うから、名前を考えたら『スイートン』が浮かんできたんだもん」
 
 小学6年生ではすでに将来の職業について、こんな達観したことも言ってたなぁ(そして今もブレていない)


 これまでの17年をあれこれ思い出す私の横で、面接の自己PRにうんうん唸る次女。初対面の相手にどんな言葉で自分のことを伝えたらいいのか、表現することの難しさに直面していた。学校の先生やハローワークの担当者に山ほどダメ出しされ(何しろマンツーマンだからね)なんども書き直した挙げ句、ある時ふと霧が晴れたように言い放った。
「こんなに真剣に自分のことを見つめ直す機会はこれまでなかった。自分には足りないところもあるけれど、いいところもたくさんあることがわかって少し自信がついた」
 うん、そうだね。キミには他の子にはない魅力がたくさんあるよ。
 その魅力が、まっすぐな想いが、面接でも伝わるといいね。


 学校の勉強と違って、努力すれば必ず実るとは限らないのが就活だ。
 うまく就職できたとしても、この先いくらでも壁にぶち当たったり悩んだりするだろう。
 でもね、そんな時にまわりに流されず、自分はどうしたいのか、自分は何が大切なのか、「自分」という芯が一本ちゃんと通っていれば選ぶ道をそんなに誤ることはないんじゃないかな。

 自分の道を照らすのは自分自身なんだよ。そのことだけは忘れないで。
 そして自信をもって一歩を踏み出しておいで。
 どうか次女の進む道に、向日葵のような大輪の花が咲きますように。どっちを向いていてもいいから、さ。
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