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番組終了に想う。
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 3月。別れと旅立ちの季節。
 私たちが働くテレビの世界でも、この春いくつかの番組が終了する。今年は不況のせいもあってとりわけ多いような気がする。

 そんな中、ひとつの番組が幕を閉じる。
 中京テレビの「人生の応援歌」
 毎週土曜日、夕方5時55分〜6時という枠で放送してきた小さな番組。2004年4月にスタートし、足かけ5年間続いた番組だ。放送回数はのべ257回に及んだ。私たちポルックスも5年前の立ち上げから参加させていただき、およそ半分の120回以上を担当させていただいたことになる。
 
 先日、すでに最終回までの撮影と編集が終わった時点で、これまで5年間に番組に携わったスタッフ全員による打ち上げが行われた。
 ふつう番組終了というと、私たち現場のスタッフは悲喜こもごもだ。「よくやった」「がんばった」という達成感がある一方で、「やっと終わる」「解放される」という気持ちが全然ないと言ったら嘘になる。これまでいくつかの番組終了に立ち合ってきたが、どちらかというと達成感よりは「もっとこんなこともやりたかった」「こうすれば終了にならずに済んだのかも」と思うことの方が多かった気がする。
 
 でもこの日の打ち上げは、そのどれとも違う雰囲気だった。
 手探りで始まった初回のドタバタぶりを振り返る者、印象に残る出演者を挙げる者、ロケ中の武勇伝を披露する者。誰もが楽しそうで懐かしそうで、そして切なそうで。誰もが別れを惜しんでいた。そう、まるで卒業式のように。

 宴会の最後、ひとりひとりが番組への想いを順に話していった。どのスタッフの発言もみな番組への愛にあふれていたが、中でもその場に居合わせたみんながはっとしたのがこの言葉だ。
 「この『人生の応援歌』という番組は、5年もの間、一度もリニューアルしなかった大変珍しい番組です」
 そうなのだ。
 番組タイトルやコンセプトはもちろん、テロップの字体一つに至るまで初回からまるで変わっていない。唯一ナレーターだけは諸事情で一回変わったが、それでも内容そのものは5年間一度もぶれなかった。
 こんなことはこの業界では本当に珍しい。たいていは途中で「てこ入れ」「リニューアル」の名のもとにさまざまな変更が加えられる。理由は視聴率不振のこともあれば、長く続けるうちにマンネリ化していくこともある。飽きっぽいテレビという世界で、走りながら手直ししていく、そんなことは日常茶飯事なのだ。
 
 「人生の応援歌」はそのどれとも無縁だった。これほどつくり続けてきても飽きるということがなかった。3年目ぐらいからは取材先へ行くと「見ているよ」「いい番組だね」と言ってもらえることも多くなった。テレビの取材はもう懲り懲り、とおっしゃっていた方が番組を見てくれて「この番組なら」と出演を快諾してくれたこともある。
 
 なんて幸せな番組。そしてそんな番組に関われたことの幸せ。
 あの場にいたスタッフみんながそんな想いだったに違いない。もちろん、私も。
 

 そしてもうひとつ、この番組をやっていてよかったのは、現場でたくさんの元気を分けていただけたことだ。

 これも多分珍しいことなのだろうが、撮影に行く現場のスタッフはやけに年齢層が高かった。カメラマンも照明さんもディレクターも、四捨五入すると50代の オッサン ベテランばかりということも少なくなかった。みんなの正確な年齢を聞いたわけではないが、現場での平均年齢は軽く40代後半に届いていたかも。
 そして、出演者は番組ホームページで見ていただければわかるとおり、この道一筋に歩んでいらしたまさに人生の大ベテランだ。取材先でお話を聞くたびに、自分たちはまだまだ若輩者だと痛感した。まだまだ頑張れる、頑張らなくちゃ、とも。

 「人生の応援歌」という番組タイトルは、とかく元気をなくしがちな40代・50代のお父さんたちへの応援歌という意味だったのだが、何のことはない、熟年チームの私たちスタッフが現場でいちばん元気や勇気をいただいていたわけだ。
 こんな幸せな番組はほかにない、と思う。
 
 
 この週末が最終回。
 でもね。番組では最終回とはどこにも出てきません。いつもと同じ内容でいつもと同じように放送してひっそりと幕を閉じようということになりました。
 なぜなら、みんなこれが本当の「最終回」だとは思っていないから。
 いつかまた「人生の応援歌」を制作しよう。それまでのこれはお休み。そう、「番組終了」ではなくて「休止」なのだと。
 そう約束し合って、打ち上げはお開きになりました。

 
 「人生チーム」のみなさん、ありがとう。さよならじゃなくて、またね。



  中京テレビ「人生の応援歌」、3月28日(土)の第257回(一応の最終回)はお菓子職人の小田春雄さんです。たった一人でドライカステラをつくり続けているそのワケを、ぜひ番組でご覧下さい。
  最後になりましたが、これまで番組を支えてくださった出演者のみなさまに心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

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